8枚玉スーパータクマーの謎
林艮的レンズ迷鑑,番外編。

まずは,間違いさがし。左と右とで,どこが違うでしょう?
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とりあえずの答え:
左はPentax SV + Super-Takumar 50/1.4。
右はPentax SPF + Super-Takumar 50/1.4。
レンズは同じかって?・・・同じようで違う,違うようで同じ・・・

  ◇  ◇  ◇

かつて,一眼レフの最初のレンズといえば,「標準レンズ」50mmか55mmだった。
明るさは,F1.8~2がエコノミークラス,F1.4がビジネスクラス,という感じ。
(F1.2というファーストクラスもあったが,バカ高かった)

レンズ構成はたいてい,エコノミークラスが5群6枚,ビジネスクラスは6群7枚だった。
レンズ枚数が多いということは,収差の補正に気を遣っているということだろう。
(コーティングの技術がよくなければ,枚数が増えると,収差の補正と引き換えにコントラストは落ちるのだが)

50mm/F1.4でダブルガウス型6群7枚構成の先駆けとなったのは,
庶民の味方ペンタックスの,スーパータクマーだったそうである。

ところがそのスーパータクマー50/1.4に,8枚構成のもの(Model I:前期型あるいは初期型)が,少数存在するという。
少数限定となると(それでいて値段は安いとなると),がぜん興味が湧いてしまう。

だが,分解してレンズの枚数を数えるわけにはいかない。
さいわい目印があって,それは書体と銘板の記載順序だという。
重さもちがうらしいが,店頭で量るわけにはいかない。
オークションではなおさらである。

そのことを知ってから,何かにつけ探していたのだが,
そもそも見かけるスーパータクマーは55/1.8ばかりで,50/1.4そのものが少ない。
まして書体の異なるものとなると,いっこうに見つからなかった。

その8枚玉が最近,相次いで見つかった。
まずはeBayで。だが届いてみたらカビカビで,即返品。
その後,ヤフオクで。これはまともだった。
比較のために,7枚玉も1本仕入れた(はずだった)。

8枚玉スーパータクマーの謎_d0123171_121510.jpg

左が8枚玉の特徴といわれる Futura っぽい書体,
右が7枚玉の証拠といわれる Helvetica っぽい書体。
(違いがいちばん顕著なのは,「a」の文字)。
シリアルナンバーの記載場所も異なる。

7枚玉は,屈折率を上げるためにトリウムを含み,放射線を発するらしい。いわゆる「アトムレンズ」である。
その放射線が,経年変化でレンズを黄色く(さらには茶色く)変色させるらしい。
ところがこの2本,並べてみても,色では区別がつかない。
黄色く見えるのはコーティングの色であって,黄変しているわけではない(と思う)。

重さを量ってみる。すると・・・
フーツラ君,公称245g(※1)のところ,
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まあ,誤差の範囲内だろう。
一方ヘルベチカ君は,公称238g(※2)のはずが,
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なんと,まったく同じ!


アトムレンズの黄変もなく,重さも同じ。
これは,どういうこと?
もしかして,ヘルベチカ君も8枚玉なの?

カギは,シリアルナンバーにありそうだ。
確認できた8枚玉のシリアルの最後のものは,134で始まる。
確認できた7枚玉のシリアルの最初のものは,142で始まる。
そしてこのヘルベチカ君は,138・・・ちょうど中間。

どうやら,書体は7枚玉と同じで,中身は8枚玉,というものが存在するようだ。
こうなると,明らかに7枚玉とわかっているものを仕入れて比較しないと,
そして,どこから書体が変わり,どこから7枚玉になったのかを知らないと,
気がすまなくなる。

完全に病気であります^^ゞ

  ◇  ◇  ◇

それにしても,まったく同じレンズを2本買っちゃったわけか・・・^^;

(「解決編」へつづく ^^ゞ)

※1,※2:朝日ソノラマ刊「カメラレビュー・クラシックカメラ専科 No.30 『ペンタックスのすべて』」 p54 による。
by lin_gon | 2008-05-31 01:45 | Pentax/Takumar


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